介護タクシーを開業する際に、個人事業で行うか、株式会社等の法人で行うか悩まれる方もいらっしゃいます。
介護タクシーは、個人事業でも法人でも事業運営が可能ですし、許可要件にもほとんど違いはありません。
ただ、介護タクシー自体は個人事業でも可能ですが、訪問介護事業の指定を受けての介護保険タクシーを行う場合には、法人でなければならないことに注意しなければなりません。
ここでは、法人で介護タクシーの開業をお考えの方のために、法人を設立する際の注意点についてご案内させていただきます。
介護タクシーを法人で開業するメリット
介護タクシーを開業できる法人の種類
介護タクシーを開業できる法人については、以下の種類があります。
・株式会社 ・合同会社 ・NPO法人 ・一般社団法人 ・医療法人 ・社会福祉法人 など
上記のように、法人にも様々な形態がありますので、今後、どのような事業展開を行っていくのかによって設立する法人を検討する必要があります。
ここでは、介護事業のための法人設立について、以下、株式会社を中心に記載していきます。
よくご依頼いただく法人について簡単に説明します。
株式会社
合同会社
一般社団法人
NPO法人(特定非営利活動法人)
株式会社と合同会社のどちらを選択すべきなのかについては、こちらのページをご覧ください!
>> 株式会社と合同会社のどちらにすべきか?
原紙定款の作成
会社を設立するためには、定款というものを作成しなければなりません。定款は、会社の組織、運営方法等を定める根本原則で、会社法に則って作成しなければなりません。
株式会社の場合には、最初に作成する定款(原紙定款)は、必ず、公証人の認証を受ける必要があります。
法律に反している内容については認証が受けられませんので、慎重かつ会社の実情に合った内容で作成してください。
定款の記載事項については、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項があり、絶対的記載事項については、必ず、定款に記載されている必要があります。
絶対的記載事項
目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所、株式会社が発行することができる株式の総数(定款で定めていない場合には、設立の時までに定めればよいものとされていますが、予め定款で定めておくことが一般的です)その他一般的なところで、株式、株主総会、取締役及び代表取締役、事業年度や剰余金についてなど、会社の運営方法を必要に応じて定款で定めます。
原紙定款については、非常に重要なものですので、安易に雛型等を利用せずに、専門家のチェックを受けることをお勧めします。
特に、事業目的について、許認可事業を行う場合には、予め必要な目的を記載しておかないと、後から追加することになり、余分な費用が掛ってしまう場合があります。
会社の商号について
会社の商号とは、いわゆる会社の名前です。株式会社の場合は、必ず、株式会社○○、○○株式会社となり、合同会社の場合は、合同会社○○、○○合同会社となります。
※会社法上は、真ん中に株式会社と入れることも可能ではあります。
また、平成18年の会社法改正により、原則として、本店所在地(住所)が同じでなければ、同一の商号を使用することが可能となりました。
ただし、不正の目的をもって他の会社であると誤認させるような商号を使用した場合には、会社法、不正競争防止法の規定により、使用の差止めや損害賠償請求がなされる可能性がありますのでご注意ください。
また、介護事業の申請では、介護事業所の屋号を付けますが、これと同じである必要はありません。
介護事業を行う場合には、介護事業所の屋号が前面に出ますので、実際には、会社名が表に出ることは少ないかもしれません。
定款の事業目的について
介護事業所の指定を受けるためには、登記事項証明書の事業目的に実施する事業の記載があることが必要となります。既存法人であっても、定款の目的欄に行う事業の文言が入っていなければなりません。
事業目的は、登記事項でもありますので、入っていない場合は、法務局で目的変更の手続をする必要があります。
(定款記載例)
1.訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、19人以上の通所介護、短期入所生活介護、特定設入居者、生活介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売を行う場合
介護保険法に基づく居宅サービス事業
2.18人以下の通所介護を行う場合
介護保険法に基づく地域密着型サービス事業
3.介護予防訪問介護、介護予防訪問入浴介護、介護予防訪問看護、介護予防通所介護、介護予防短期入所生活介護、介護予防特定施設入居者生活介護、介護予防福祉用具貸与、特定介護予防福祉用具販売を行う場合
介護保険法に基づく介護予防サービス事業
4.居宅介護支援を行う場合
介護保険法に基づく居宅介護支援事業
また、その他、障害者総合支援法や障害児自立支援法等に基づくサービスを行う場合には、必要に応じて、下記の事業目的を加えておくことをご検討ください。
○障害者総合支援法に基づくサービスを行う場合
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく特定相談支援事業
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく一般相談支援事業
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく地域生活支援事業
○児童福祉法に基づくサービスを行う場合
児童福祉法に基づく障害児入所施設を経営する事業
児童福祉法に基づく障害児通所支援事業
児童福祉法に基づく障害児相談支援事業
○介護タクシー事業を行う場合を行う場合
一般乗用旅客自動車運送事業及び特定旅客自動車運送事業
事業目的は、あまり関連のない事業を多く入れることはよくありませんが、将来行う可能性のある事業については、予め入れておいた方がよいでしょう。
将来、業種追加する際に事業目的を追加することもできますが、その際には、登録免許税や専門家の費用等がその際にもかかってしまいますので、先に一緒に入れておく方が望ましいと思います。
※上記は株式会社、合同会社を設立する場合の定款の記載例です。
医療法人や社会福祉法人など定款変更の際に認可が必要な場合は、必ず、所轄・監督官庁にご確認下さい。
介護事業の資本金について
株式会社を設立する場合には、出資者が株式会社に対して出資する必要があります。この出資された金銭のことを「資本金」といいます。(実際には、金銭以外のものが出資されることもあります)
そして、出資した方のことを「株主」といい、株主は出資した金銭の代わりに、株式会社から「株式」を発行してもらいます。
本来、株式会社というのは、出資と経営が分離されており、出資者がお金を出して「経営はプロに任せよう」というのが本来の姿ですが、実際には、大半の企業は出資者と経営者が同じです。
さて、資本金の金額についてですが、現在では、最低資本金制度は撤廃されており、資本金はいくらでもよいことになっています。
ですから、1円で会社を設立することも可能です。
介護事業の指定を受けるにあたっても、「資本金がいくら以上必要」という決まりはありません。
だからといって、「資本金をいくらにしてもいいのか」というとそういうわけではありません。
介護事業については、売上の9割は介護保険から支払われます。
この支払いは、請求してから約2ヵ月後に法人の口座に振り込まれます。
ですから、開業後2ヶ月は、売上はほぼゼロの状態となります。
その上、その間も人件費や営業所の家賃などの費用が掛かります。
資本金を算出する場合には、このあたりのことも考えて事業計画を作成し、資本金を決めることになります。
介護事業の指定にあたってもそのあたりの確認がされますから、目安としては、2ヶ月分の運転資金ということになります。
ただ、これは最初から利用者がいる場合です、実際には、すぐには利用者は集まらないでしょうから、その辺も考慮しなくてはなりません。
必要であれば、身内(ご両親・ご兄弟等)や日本政策金融公庫などから借りる必要も出てくることでしょう。
弊事務所での設立事例では、200万円~300万円で設立される方が多いです。
また、資本金は、対外的な信用の証としてみられることもありますので、設立後に金融機関からお金を借りる予定がある場合等は、その点も考慮して、資本金を設定する必要があります。
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